胃がんとの関係が深いピロリ菌は
内視鏡検査と同時に感染の有無を検査しましょう
ピロリ菌とは
正確には「ヘリコバクター・ピロリ」といい、胃の粘膜に棲みつく菌で、主に胃や十二指腸などの病気の原因になります。特に胃がん患者の100人中99人がピロリ菌保有者だともいわれています。
多くの人が5歳くらいまでに感染し、感染するとほとんどの場合、除菌をしない限り胃の中に棲み続けます。胃にピロリ菌が感染すると、粘膜に慢性的な炎症が起こり、その進行に伴い萎縮性胃炎が生じます。ピロリ菌による胃粘膜の萎縮が進むほど、胃がんが発生しやすくなります。
また、ピロリ菌は、「胃MALTリンパ種」や血小板が減る「特発性血小板減少性紫斑病」などの血液系の慢性疾患を引き起こすこともわかっています。
当院が考えるピロリ菌除菌の意義
ピロリ菌は、服薬によって除菌(退治)することが可能で、将来的な胃がんの発生を減らす効果が期待されています。ただしどのくらいその発症率が減るのか、まだ正確なデータはまだ揃っていません。
ただし、これまでに経験した数多くの症例を見る限り、ピロリ菌の存在が胃粘膜に悪影響を与えていることは間違いがないように思います。
除菌の前後の胃粘膜の色を比較すると、その赤味に違いがあることがわかります。その変化はわずかではありますが、写真を比較をすると一般の方にもわかる程度です。ピロリ菌がいる頃の粘膜は赤味が強く、人間の表情で言えば「眉間にシワを寄せている感じ」です。一方、ピロリ菌がいなくなった粘膜は炎症が落ち着き、ピンク色で穏やかな印象を受けます。除菌を行うことでピロリ菌による胃粘膜へのストレスが減ったというわけです。ピロリ菌がいるにもかかわらず、その自覚症状はなかったという患者さんでも、除菌治療を行ったことで胃の調子が良くなったことを実感したという方もいらっしゃいます。
以上のように当院ではピロリ菌の検査は、胃がんの予防はもちろんのこと、胃粘膜へのストレスを取るという意味で重要視しています。内視鏡検査とピロリ菌検査はセットで行うことが、より健康な胃に向けての第一歩であると考えています。
同じ患者さんで、除菌前後の粘膜の色を比較
除菌前は粘膜の赤みが目立ちます
除菌に成功すると赤みが薄れています
ピロリ菌感染による症状
- 胃もたれや吐き気
- 空腹時の痛み
- 食後の腹痛
- 食欲不振
※これらの症状は、一時的な暴飲暴食のせいだろうと自己判断で軽く見られがちなので注意が必要です。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染の有無を調べるには、現在、「胃がんリスク検診(ABC検診)」と「内視鏡検査で胃炎を確認した上でチェックする方法」の2通りがあります。
「胃がんリスク検診」は、採血結果からピロリ菌感染の有無と胃炎の有無を推測する方法で、どのくらい胃がんになりやすいかという危険度を明らかにするものです。採血だけで行えるため簡便ではありますが、内視鏡での観察をしない分、取りこぼされるケースも否定はできません。また検査の結果によっては、結局内視鏡検査が必要となることも少なくありません。
そこで当院では、「内視鏡検査で胃炎を確認した上でチェックする方法」をおすすめしています。現在の胃炎の程度、胃がんの有無を直接確認することが非常に重要であると考えているからです。
ピロリ菌の除菌方法
ピロリ菌は「胃酸を抑える薬」と「ピロリ菌を殺す抗生物質」の併せて3種の薬を、1日2回1週間服用することで退治することができます。治療期間中に一度でも薬を飲み忘れると除菌の成功率が低下するため、確実に服用することが大切です。
当院では1週間飲み終えた後、その8週間後に「尿素呼気試験法」で治療の成否をチェックをします。初回での除菌成功率は約9割です。残念ながら初回治療で除菌に至らなかった場合には2回目の治療をを行い、最終的には9割5分以上の方が成功します。ただし2回目の治療の際は、内服薬の都合上アルコール摂取は禁じられています。